2025.12.02 注口土器の内壁を3D化!~最新技術による文化財デジタル化の新提案~
2025年11月30日の中日新聞に掲載されました!
どんな形の土器も3Dデータで撮影が可能に? 飛騨みやがわ考古民俗館で撮影会:中日新聞Web
ナルックスが開発した3D工業用内視鏡を用いて、考古学文化財を計測するイベントを2025年11月19日、岐阜県飛騨市にある飛騨みやがわ考古民俗館にて、石棒クラブ様ご協力のもと開催しました(飛騨市主催)。本イベントは、注口土器の内壁をのフルカラー3D化するという、従来は困難だった課題に取り組み、文化財研究に新しい可能性を開く挑戦です。
本記事では、現場スキャンの様子と得られた3Dデータ、この技術がもたらす価値を紹介します。文化財のデジタル化や、狭所のフルカラー3D化における新たな選択肢として、3D工業用内視鏡がどのように貢献できるのかをお伝えします。
内壁はナルックス開発の3D工業用内視鏡で撮影し、外壁は石棒クラブ様が撮影しました。
岐阜県飛騨市の「飛騨みやがわ考古民俗館」では、フォトグラメトリによる文化財のデジタルアーカイブ化に積極的に取り組まれています。フォトグラメトリは、様々な角度から撮影した複数の画像を解析することで、三次元座標を推定して三次元モデルを生成する技術です。完全な三次元モデル化の実現には、土器の内壁の撮影に困難さがあるなど、多くの課題が残っています。
注口土器と呼ばれる、土瓶や急須に似た形状の、注ぎ口がついた縄文土器があります。この注口土器の研究では、注ぎ口の位置や形状が年代推定の重要な手掛かりです。開口部の狭さゆえに、内部の形状は人の目で「覗く」程度でしか確認できず、第三者への情報共有や、記録手段に乏しいといった課題があります。


注口土器は入口が狭く、内部が良く見えない形状をしています。
この課題に対応するため、ナルックス開発の3D工業用内視鏡を用いて、注口土器内部を撮影し、立体化する技術検証を実施しました。本取り組みは、考古学コミュニティ「石棒クラブ」様によるイベント「石棒強化月間」の一環として開催され、一般参加者も交えたオープンな場での検証となりました。
3D工業用内視鏡の特徴である小さなカメラヘッドは、狭い空間に入り込むことができます。狭い空間の撮影に特化した装置を開発し、さらにフォトグラメトリ技術と組み合わせたことで、土器内壁の凹凸を非接触でかつ色情報を保持したまま立体化することに成功しました。さらに、フォトグラメトリで作成した外側のデータと統合することで、土器の厚みや内部と外部の三次元的な位置関係を確認できます。この成果は、文化財研究における精密な内壁構造の記録や修復検証、さらには作り手の痕跡解析など、従来不可能だった領域に新しい可能性を提供します。


本技術・本製品は、文化財だけでなく、狭所構造物や産業設備の内部検査など、幅広い分野への応用が期待できます。非破壊で精密な色情報を持った3Dデータを取得できる特性は、文化財の保存・修復計画の高度化や、製造業における品質管理にも貢献できる可能性があります。さらに、AIによる自動解析やクラウド連携によるデータ共有など、デジタルアーカイブの新しいワークフローを構築することで、研究者や技術者の作業効率を大きく向上させることを目指しています。
▶参考情報
- 飛騨市公式サイト:https://www.city.hida.gifu.jp/
- 石棒クラブ公式サイト:https://www.sekiboclub.com/
▶ お問い合わせはこちら!
https://www.nalux.co.jp/contact/